Think Earth Interview:無農薬農家 大澤進

Think Earth Interview:無農薬農家 大澤進

eit swimが今もっともお話を聞きたい方へのインタビューシリーズ。今回は千葉県・一宮町で無農薬農家を営む、大澤進さん。

海沿いの町に住んでいた時、お野菜はかならず大澤さんの直売所で購入していました。言わば推しの農家さん。直売所に行くとお野菜のことや調理法を教えてくれたり、飼育しているヤギやニワトリ、ウサギと触れ合わせてくれたり。

大澤さんの野菜は、無農薬がゆえ時には虫がついていることもあるけど、「大澤さんが作るお野菜なら」そう思えちゃうから不思議。“生産者の顔が見える野菜”の効果を実感しています。

18年前、某大手企業から農業に転身したきっかけは「環境に関わることがしたかった」から。なんだか普通じゃない動機。とっても気になります。


 

––農業をスタートしたきっかけは?

某大手企業に勤めていた頃、会社が出版する印刷物の資材部に在籍していました。つまり紙の調達係を10年程担当したことがあったんです。
ドイツやオランダ、ノルウェー、カナダといった海外に紙を買いに行っていたんですがものすごい量の木を切って、それを紙として使っている現実を目の当たりに。当時、年間100億円くらいの紙を使っていました。その分だけ地球を壊しているんだ、と思ったんです。

日本の企業は木を切ったら植えるというシステムがあって、自然林は荒廃しているけど人工林が増えている。それはそれでいろんな問題があるけど、困ってしまうのは発展途上国の森林です。マレーシアやインドネシアなどは木を伐採しても切りっぱなし。そこに火をつけて焼いて、焼畑農業を始めたりすると一見良さそうだけど、地球上の木はものすごい勢いで減っていく。

仕事だからしょうがない……でも環境を守るために何かしなければ、と思って社内で「地球環境室」を立ち上げました。環境のことを勉強していろんなプランを練っているうちに、世の中が紙メディアからwebメディアに変わっていって、なんだか自分の役割が終わったような気がしたんです。

せっかくだから、この後の人生は環境を守ること関わりたいと思うように環境に一番近いこと=農業という短絡的な考えでしたけど、思い切って50歳で退職し、ここ一宮で農家を始めました。


 

––農家を始めてから、気候変動や環境のことをより感じるようになりましたか?

そうなんです。気候変動は肌で感じています。異常な暑さに、雨の降り方も変だし、そのせいで野菜も育てるのが大変になります。
都会に住んでると少し気づきにくいかもしれないですよね。自分が飲んでいる水や食べ物はどこから来るのか、空気は誰が綺麗にしているのか、とか。田舎、自然、地球の力が作用しているとわかると、もっと関心を持つきっかけになるんじゃないでしょうか。


 

––無農薬にこだわる理由は?

実は、化学肥料や農薬が環境にどんな負荷を与えるかは、後になって知りました。
もちろん、農業が環境改善に比較的、役立つことは漠然とわかっていたけど。農業が環境を破壊しているという面もあるということを知ったのはこの10年くらいだし。
だから最初は、お客さんのニーズで始めたんです。移住者が多いこの辺りでは、意識の高いお客さんが多くて。
無農薬にはこだわっているけど、化学肥料は今も使うことがあります。自然農法が一番だというのはわかっていながらも、理想論だけでは難しいところもあって。ここでキーワードになってくるのが「持続可能な」農業無理してもしょうがないし、長続きしないと意味がない。

もちろん、最悪なものは絶対に使わないようにしています。例えばヨーロッパではすでに禁止されているネオニコチロイド。カメムシを撃退する殺虫剤なんですが、これが世界のミツバチの減少に繋がっていることは有名ですよね。
日本では禁止されていないからまだ全然使われているけど、養蜂場が多いこの辺では使用する日時が決まったらアナウンスされるんです。その間、養蜂家がハチを屋外に出さないようにするために。でもそんなことを知らない野生のミツバチはどうなるんだろう。恐ろしいですよね。


 

––大澤さんの直売所に通うようになって、旬のお野菜で料理を作るようになりました。

それはよかった。旬の野菜が一番カラダにいいですからね。でも小規模でやっているとたくさんの種類の野菜が作れなくて。例えば長野の知り合いの農家から高原レタスを取り寄せることもできるんだけど、物流コストと消費エネルギーを考えると「持続可能」ではない。

良い食材は移動距離の短さもポイントになってくると思っています。新鮮で、移動にかかるエネルギーが少ないのが一番良い。「地産地消」と昔から言うけど、本来、無理に時期じゃない野菜を使う必要はないんです。

この地域でもビニールハウスで真冬にトマトを作ったりしているけど、暖房をつけて、コストをかけてやっているから、これに関しては本当の意味での「持続可能」ではないですよね。




––「持続可能」の大切さを私たちも痛感しています
。ブランドとしては、できれば100%環境負荷がないモノづくりをしたいと思っていますが、急にすべてをシフトすると無理が生じたり、継続が難しくなる。だから「できることから1歩ずつ」が大事なのかなと。

そうですよね。どんなことでも持続できなければ意味がないからね。



––農家さんってなんだか大変なイメージですが、現実は?

お金が必要なのに、お金が入りづらい職種かもしれません。農業や林業などの第一次産業は、大変な割に収入になりにくいんです。小さな農家は特に大変だと思います。

ヨーロッパは家族経営や小さな農家を育てようとして国が助成金をしっかり出してくれる。それに比べて、日本は大規模化を進めているので大規模農家へのサポートがメイン。例えば重機を買う時、新車を買うと何割か負担してくれる制度があるけど、小規模でやっている農家は中古を買うわけで。そうすると助成金は出ないんですよね。

それが日本で小さい農家が何代も続いていかない理由のひとつだと思います。今の専業農家の平均年齢は66.8歳。圧倒的に若い人が少なくて、後継者も少ない。もっと国や町が小さな農家をサポートするべきだと思っています。


 

––でも直売所での大澤さんはいつも笑顔で、楽しそうです。

土や動物と触れ合っていると、ストレスは基本的にないですよ。農家になってから18年間、風邪も引いてないし、病院にはほとんど行ってません。
本来、私の年齢で会社員だと、ちょうど定年するくらい。毎日やることがないし、本屋や映画だって飽きるでしょ。その点、農家だと毎日やらなきゃいけないことがあるのが素晴らしい。健康だし、仕事後の酒はうまいし、毎日最高ですよ。

孫が2人いるんだけど、自分で作ったものを送ってあげられるのも幸せですね。嫌いな野菜でも「じいじが作ったんだよ」と言うと食べるみたいです。


 

––消費者である私たちにはどんなことを望んでいますか?

みなさんには、お米をいっぱい食べて欲しいですね。昔は年間1俵くらい平気で食べていたのが、今ではどんどん減っているんです。米の自給率は100%だけど、小麦はほとんどが輸入で、輸入時には殺菌剤、防カビ剤のポストハーベスト農薬を使っている。こんなにも大豆大国なのに、大豆も7割が輸入です。
日本の食料自給率がそもそも3〜4割と、とても低い。ここにも関心を持たないといけないですよね。
実は日本の農業には問題が山積み。持続可能な農業にするための環境意識を、生産者だけでなく消費者も考えてほしいと思っています。


バックグラウンドを聞くと、ますます大澤さんの作る野菜が愛おしくなりました。自分たちが口にする食材についてもっと知ることは日本の農業を考えることにつながります。
みなさんも“推し”の農家さんを探してみては。

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